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I try to challenge myself
自分の歴史の中で、できることを増やしたいから
~石狩ひつじ牧場~
THE CROSS STORY ~出会い~
想いを叶え続けていく人たちと、そこにつながる“もの”や“こと”から生まれる、新しい体験との出会いを。
人と地域が物語る、心を動かされるたくさんの体験を。
クロスホテル札幌で。
アワシー、イーストフリージアン、ポール・ドーセット。国内では希少な乳用種を育て、本場ヨーロッパにも負けない理想の羊乳チーズづくりを追求する、石狩ひつじ牧場 山本知史氏。クロスホテル札幌では、2022年4月から羊飼い体験のオプションプランをスタート。札幌中心部から40分ほどの牧場で、得難い機会を思い出にすることができる。山本氏は、自分の最高記録を達成したいと、54歳で羊飼いになった。その挑戦には、感動のおいしさと、今を生きる私たちに温かな勇気を与えてくれる物語が詰まっている。
羊を育てて、羊乳のチーズづくりを
石狩市の南、銭函に隣接する樽川。道路沿いのゲートを入るとすぐ目の前に羊たちがいる。ヴェ~ヴェ~、そこかしこから断続的に羊たちの声が聞こえ、何とも言えないのどかな気持ちになる。その一方で、思いの外体が大きく、角もあり、普段目にしたりイメージしている羊との違いに気づき興味が湧く。
放牧地と羊舎やチーズ工房、事務所などの建物が並ぶ、今は約5.5haになったという牧場を、山本氏は2016年にまったくゼロから始めた。「チーズ専門のインポーターになって20年以上、世界中のチーズを味わい、知り尽くした中で、本当に旨いと感動したのが羊乳のチーズだったんだ。そのおいしさをもっと広めたい、羊肉が身近な北海道でさえ一般的ではない羊乳でチーズづくりがしたいと思って。乳用種の羊が日本で手に入らないとわかっても、輸入業を営んでいるから、自分で輸入すれば始められるとやってみたんだけど、ものすごく大変だった。普通は、羊を輸入してまでやることなのか、羊乳のチーズを一から作るなんて、無理じゃないかと思うんだろうけど、やってみたかったんだよね。自分が生きている証として挑戦したかった。お金では満たされないもの、すごく難しいことに挑んで、自分を高めていきたいってね」と熱く語る山本氏は、30代前半まで中学校の理科の教師だったという経歴も持つ。その頃は生徒たちを応援していたが、今は自分で自分を応援する人生だと笑った。
羊を育てて、羊乳のチーズづくりを
日々羊と向き合っていると、羊たちの命をどれだけつないでいけるか、事業を次の人たちに継いでいけるか、を考えさせられると山本氏。「いろいろなことを信じられなくなったコロナ禍においても、記録的な雪が降った中でも、命は確実にリレーされていく。生き物の生と死は尊いもので、無くなることのないもの。餌をあげて、フンを掃除して、同じ空気を吸って。日々成長していくその時は、その時にしか見ることができない。牧場の見学体験も受け入れているんだけど、動物を飼育して命をいただくということを、1時間くらいの時間でも羊飼いを体験してもらうことでわかってもらいたい」と話す。
「羊を前にしたら素直になれるんだよね。いろんな発見があるんだ。チーズも肉も、自分が食べるために作っているという部分もある。安全で安心して食べられるものを作りたい。自分が食べていて、ほらこんなに元気でいると胸を張っていたい。そういうものをお客様に届けたい」と力を込める。
自慢のチーズは、どれも羊乳のチーズに対するステレオタイプな考え方を大きく覆す、ピュアで趣のあるおいしさだ。うっすらと白カビをまとい、まろやかな風味を楽しめるフレッシュタイプ、豊かで深い複雑な旨みがクセになるハードチーズのペコリノ、そしてぷりっとなめらかな食感の中に香しさが満ちている、最も作りたかったブルー。数種類のチーズ製造を実現し、さらなるおいしさを追求している。そしてその味は全国へと広がりつつある。
これからの農業を次世代に引き継ぐ
Profile
石狩ひつじ牧場 山本知史
乳用種の羊350頭を育て、羊肉、チーズ、ジェラートなどの羊乳加工品の製造・販売を行う。羊は撫でるともっと撫でてと反応するそう。愛着のある羊は、出荷時にできるだけ一部を自分で食べるようにしていて、出荷でき、命をいただけることが幸せだと話す。輸入チーズと食材の専門店「チーズマーケット」も経営。福井県敦賀市出身、札幌市在住。